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最近読んだ本

2009年06月15日 14:30

最近の読了記録
16)「贖罪」 湊かなえ著/東京創元社

『告白』の著者ということでかなり期待しました。
この作品もページターナーの本領発揮で、最後までどきどきしながらストーリーを追いました。
空気がきれいなことがとりえの田舎町で、同級生を殺害された小学生の女の子4人のそれぞれの人生を描きながら、徐々に事件の真相にせまってゆく。
この展開だけでも気になるのに、この作者は告白形式のストーリーがほんとうにうまい。
犯人の目撃者でもある女の子4人の被害者との微妙なスタンスとか、事件の影響で「こんな大人になったんですよ」的な理由づけも、都会ほどうまく発散できるチャンスのない田舎との対比が描かれていて、なるほどなあと思った。
中心になるむごい殺人事件自体はそれほどスポットライトが当たっておらず、亡くなった被害者だけじゃなくその周りの人々に与えた影響の大きさを描いた話だと感じた。
湊さんは、「いやな女性」というキャラの描写に手加減がない。
そこがよりリアルだし、読んでいていちばん怖いなあと思う。

17)「日曜日の夕刊」 重松清著/新潮文庫

12の短編集。
『カーネーション』や『サマーキャンプへようこそ』『さかあがりの神様』など、親子の関係で胸がじんわりするようなお話が多かったけど、わたしのお気に入りはなんといっても『後藤を待ちながら』。
大人になるって残酷だなと思わずにいられない。
でも大人になったからこそ、腹を割って話せるようになるのかもしれない。

18)「きみの友だち」 重松清著/新潮文庫

重松さんの本はもう何冊も読んだけど、断然これがイチオシ。
交通事故がもとでその後の人生を松葉杖なしで暮らせなくなった恵美と、持病を抱えている由香を軸に友だちを描いた10作の連作長編。
こちらで出てきた人物があっちにも出ていて、どれもみんなすこしずつ繋がってる話。
どの人物もけっして完璧ではないし、どこかにいそうな子がほとんどで、だからこそ「友だち」に対する気持ちも揺れるんだけど、それがけっこう身に覚えのあったりする「揺れ」なのだ。
中盤ぐらいまではそんな感じで読んでたけど、後半はもう気をぬくと目に涙がたまるような展開。
でもそこにたどり着くまでに未来も垣間見れていたので、「ああやっぱりそうなんだな」とある程度の安心感はありました。
いきなり衝撃の展開にしない重松さんはほんとうにやさしい。
年齢を重ねるとちょっとしたことでもすごくショックを受けることがあって、気持ちを立て直すのに若いころの倍以上かかってしまうこともあるので、こういう文章の気遣いってぐっとくる。
「泣かせようなんて思わない」系の話で泣けてしまうやつは、「泣ける」話なんかぜったいに手を出さないもので、それでいいじゃん、と思う。

……えっと、話がそれましたが、無愛想でだれにも媚びない恵美にわたしはすごく好感を持ったし、松葉杖生活の娘(姉)なのにまったく過保護にならない恵美の家族もすごいなと感じました……まあ、ブンちゃんは多少心配性ではあるけれど(笑)。
読んでいるあいだじゅうずっと、だれの目線で書かれているんだろうと思っていて、それが明らかになってからの展開は絵に描いたようなハッピーエンド。
もちろん、そんなラストもすごくいいんだけど、わたしはそこにたどりつくまでのたくさんの苦悩やすれ違いや嫌悪や涙のある展開がすごく好き。
なんだか人間としてすごくたくさんの「ひだ」をつけられてるような気がしたので。
重松さんの本を読むといつも気分がほっこりしてくるんだけど、この本は別格です。



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