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読了

2009年03月04日 11:31

寒いなあと思っていたら雪が舞いましたよ。
春の雪らしく、積もらなかったけど。
もうずいぶんお日様に会ってないような気がします。
今年は暖冬みたいだけど、はやくあったかくなってほしいなあ。

最近の読了記録
10)「オリンピックの身代金」 奥田英朗著/角川書店


昭和39年、オリンピックに沸いていた東京を舞台に、
東北出身の東大生の心情を繊細に描いたサスペンス。
テレビでしか観たことのない東京オリンピックや、出稼ぎ労働者の現実、
今よりずっと幅の広かった貧富の差などが鮮明に描かれていて、上下二段で521ページにもなる大作をまたたく間に読み終わってしまった。

ストーリーが面白かったのは、島崎国男というあまりにも純粋でまじめな東大生のキャラクターのせいでもあるし、
元同級生でありながらあまりにもチャラ男な須賀忠との対比のせいでもある。
なんというか、この時代の金持ちってケタがちがうな……そういう意味では今よりずっと富める者と貧しいものの差が大きかったんだなあ。
そうした格差が、オリンピックを人質にしてしまえという突拍子もない計画を生んだわけだけど。
初めて招致するオリンピックはどこの国にとっても華々しいイベント。
その裏でどれほどの労働力が酷使され使い捨てられていたのか、メディアや国家は真実を伝えないんだなと、薄々気がついてはいたけどこういうことか、とやっと思い至った。

登場人物では、主人公ともいえる島崎が憎めない性格でつい肩入れしたくなった。
特に仲間を救いにヤクザの事務所へ直談判に行くシーンは、思わず声をあげて笑ってしまった。
東大生なので下手に手を出せないし、ヤクザも気味悪がるほど実直でおバカというか(笑)。
映画化するならぜひとびきりのイケメンにやってもらいたい。
そして須賀がいい感じの脇キャラで、どうしようもないチャラ男なんだけど
実家のことだけはちゃんと考えてるあたりが昭和39年のお坊ちゃんだなあと。
……この人、きっとこのあとすごく出世したよね。
警視庁の落合とか矢野にもりっぱな肩書きがついただろうな。
昭和って、最近のドラマや映画でいわれるほど美しい時代じゃなかったと思うし
つらい生活を強いられた人々も今よりずっと多かったと記憶している。
でも底力があって折り目のついていた最後の時代だったのかもしれない。




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