2008年11月18日 15:36
最近の読了記録
35)「翼」 村山由佳著/集英社
アメリカ先住民族(特にナヴァホ)に対する意識が変わった1冊。
初版で買ったまましまいこんであったんだけど、読みはじめたら止まらなくなって一日で読んでしまった。
どうしてもっと早く読まなかったんだろうと悔やむほど、自分と重なる部分が大きかった。
この本が出たころはまだ、「どうにも落としどころのない気持ち」がどこから来るのか
わたし自身よくわかってなかったんだろうな。
ボストンで生まれ育った主人公の真冬は、日本でもアメリカでもどっちつかずな自分を抱えている。
親からしっかり愛された記憶のない彼女は、ラリーという恋人を「愛している」という感覚がわからず、
どこか心を開けない。
前半は、そんな真冬とラリーをとりまくニューヨークでの物語、
後半はラリーの一家が暮らすアリゾナを舞台に移してのアイデンティティを求める物語。
村山さんの小説は思いがけないところで死が出てくるので、いつも読むときは緊張してしまうし、
買ったまま手をつけずにいたのも、そんな予感からだったのかもしれない。
結論からいうと、この本もまた「なにもこんなところで」と思うような死が描かれている。
でもその運命が導く後半のストーリーは、癒しと呼べる展開につながっていく。
とくに真冬とブルースとのやりとりがいい。
わたしは、アメリカの先住民族って、どこか懐かしいというか通じ合うものがあるよなあと漠然と感じていたんだけれど、
この本を読んでみたら本物の先住民族の教えは、日本古来のアニミズムのような、
自然に対する尊敬と調和みたいなものが強く出ていて、もっとずっと誇り高い人たちのような気がした。
我慢するのはよくないけど欲しすぎてもいけない、という均衡は中庸という言葉におきかえられるし、ほかの文化圏でも、大事にしているところは多いのでは。
先住民族のほうがスピリチュアルな意味が強いけど、漢字圏と同じように名前に意味があるっていうのもすてきな文化だと思う。
アリゾナは一度だけ訪れたことがあるけど、次はじっくりと日程を組むような旅行をしてみたくなった。
36)「砂漠の船」 篠田節子著/双葉文庫
最初の数ページを読んだ時点では老人介護の話かなあと思っていたけど、いやー、まんまとだまされてしまったよ!
今時めずらしいくらい隣近所とのつきあいが濃いニュータウンで暮らす一家の歯車が狂いだす怒涛の人間ドラマ、という感じ。
でもこの父親みたいに、向き合ってるつもりでぜんぜんつっこんだ話ができてない人には当然の展開かもしれない。
家庭というのは理想どおりに作りあげる箱庭ではなく、生身の人間とぶつかりながら生活するということじゃないの?
もちろん妻と娘のほうにもコミュニケーション下手なところはあるけど、
主人公が妻を女として見ずに「ママ」とか呼んだり、一人娘がどんな考えなのかも聞こうとせずに、
ひとりよがりな「親の希望」を押しつけたり、そういうことだから家族が離れていってしまうんだよ、と思ってしまった。
変わりたがらない、トライしたがらない男性のショボ感の描写もうまいけど、
篠田さんの書く女性はやってることにちゃんと理由があって、しかもタフだなと思わずにいられない。
それに、コミケや同人誌ワールドのリサーチもしてるのね(笑)。
35)「翼」 村山由佳著/集英社
アメリカ先住民族(特にナヴァホ)に対する意識が変わった1冊。
初版で買ったまましまいこんであったんだけど、読みはじめたら止まらなくなって一日で読んでしまった。
どうしてもっと早く読まなかったんだろうと悔やむほど、自分と重なる部分が大きかった。
この本が出たころはまだ、「どうにも落としどころのない気持ち」がどこから来るのか
わたし自身よくわかってなかったんだろうな。
ボストンで生まれ育った主人公の真冬は、日本でもアメリカでもどっちつかずな自分を抱えている。
親からしっかり愛された記憶のない彼女は、ラリーという恋人を「愛している」という感覚がわからず、
どこか心を開けない。
前半は、そんな真冬とラリーをとりまくニューヨークでの物語、
後半はラリーの一家が暮らすアリゾナを舞台に移してのアイデンティティを求める物語。
村山さんの小説は思いがけないところで死が出てくるので、いつも読むときは緊張してしまうし、
買ったまま手をつけずにいたのも、そんな予感からだったのかもしれない。
結論からいうと、この本もまた「なにもこんなところで」と思うような死が描かれている。
でもその運命が導く後半のストーリーは、癒しと呼べる展開につながっていく。
とくに真冬とブルースとのやりとりがいい。
わたしは、アメリカの先住民族って、どこか懐かしいというか通じ合うものがあるよなあと漠然と感じていたんだけれど、
この本を読んでみたら本物の先住民族の教えは、日本古来のアニミズムのような、
自然に対する尊敬と調和みたいなものが強く出ていて、もっとずっと誇り高い人たちのような気がした。
我慢するのはよくないけど欲しすぎてもいけない、という均衡は中庸という言葉におきかえられるし、ほかの文化圏でも、大事にしているところは多いのでは。
先住民族のほうがスピリチュアルな意味が強いけど、漢字圏と同じように名前に意味があるっていうのもすてきな文化だと思う。
アリゾナは一度だけ訪れたことがあるけど、次はじっくりと日程を組むような旅行をしてみたくなった。
36)「砂漠の船」 篠田節子著/双葉文庫
最初の数ページを読んだ時点では老人介護の話かなあと思っていたけど、いやー、まんまとだまされてしまったよ!
今時めずらしいくらい隣近所とのつきあいが濃いニュータウンで暮らす一家の歯車が狂いだす怒涛の人間ドラマ、という感じ。
でもこの父親みたいに、向き合ってるつもりでぜんぜんつっこんだ話ができてない人には当然の展開かもしれない。
家庭というのは理想どおりに作りあげる箱庭ではなく、生身の人間とぶつかりながら生活するということじゃないの?
もちろん妻と娘のほうにもコミュニケーション下手なところはあるけど、
主人公が妻を女として見ずに「ママ」とか呼んだり、一人娘がどんな考えなのかも聞こうとせずに、
ひとりよがりな「親の希望」を押しつけたり、そういうことだから家族が離れていってしまうんだよ、と思ってしまった。
変わりたがらない、トライしたがらない男性のショボ感の描写もうまいけど、
篠田さんの書く女性はやってることにちゃんと理由があって、しかもタフだなと思わずにいられない。
それに、コミケや同人誌ワールドのリサーチもしてるのね(笑)。
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