fc2ブログ

読了記録

2008年10月02日 17:29

最近の読了記録
28)「アメリカ大学事情」 花井喜六著/東京新聞出版局

発行が昭和五十三年とかなり古い本なので、これから留学するかたにはあまり参考にならないかも知れません。
ただ、ネットやブログやケータイこそ影も形もなかったけど、アメリカの教育機関にそれほど劇的な改革があったわけでもないので、
変わっていないシステムもたくさん記述されていて、そうそうそう、そうだった!と思う点はいくつもありました。
70年代にビジティング・スカラーとしてミシガン大学に留学した筆者の体験記ですが、
本書よりかなりあとになって同じ中西部のアイオワ州に留学したわたしのような者でも、過去をふりかえったりして懐かしめる一冊。
……ま、要は毎年この時期におそってくる「学校に戻りたい病」にかかったわけです(笑)。

以下長いので(汗)、もし興味がありましたらどうぞおつきあいくださいまし。



ミシガン大学といえば全米トップクラスの名門校。
特に経済・経営学部や法学部の勉強はめまいがするほどのハードさが伝わってきます。
ビジティング・スカラーという一種の聴講生という立場を最大限に活用して貪欲に動き回り、たくさんのものを吸収している筆者がほんとーにうらやましい。
70年代ということもあってか、ウヨクだのサヨクだのという言葉が出てくるところは時代を感じます。
あと、女性やマイノリティの教授や幹部が少ない。
このへんは大学自体が変化したというのではなく、社会の流れが変わったのかな。

学生が教授を査定評価するコース・エバリュエーションは、近頃は日本の大学や企業でも見聞きするようになりましたよね。
わたしの在学中も、学期ごとに一つ二つは必ず評価をつけるクラスがありました。
向学心の高い生徒が集まる大学では、たとえ学生から好かれたくて必要以上に易しい授業内容にしても、
逆にその点で厳しくグレードがつけられて、けっきょく教授自身の評価が下がってしまうと思います。
アメリカ人はひとりひとりが真っ当に学生としての権利を使うことに慣れているし、また本書の中で述べているように、
アメリカの大学自体も、一定の期間に一定のレベルへ押し上げてゆく効率のいい制度なんだと思います。

アメリカでは総合大学が地域の活性化に一役買っていて、
地域の人々がキャンパスで開かれる公開講座や講習会、セミナーに参加できるのはもちろん、
博物館や美術館も無料で見ることができるし、コンサートや講演会、映画も低価格で楽しめる。
日本でも大学や短大を抱えている地方都市がたくさんあると思うけど、地域の人や社会人がもっと気楽に楽しめたらいいのになあ。

また筆者も苦労したように、留学生同士だとそれほど努力もせずに親しい間柄になれても
現地学生とはなかなか壁をとっぱらってうちとけられない事実も、痛いほどよくわかる。
ホームステイで相性のよい家族と知り合いになったり、よくできたアメリカ人ルームメイトを得られればとっかかりはできますが、
本音で話ができてうちとけられるアメリカ人と知り合うのはそれこそ奇跡に近い。
だけど世界の縮図のようなキャンパスで過ごす魅力はそれだけではないような気もします。
アメリカ留学というのは世界の国々や人を知るいい機会でもある、とはまさにそのとおりですね。

全体を通して経済から政治、文化、国際関係やサブカルチャーにいたるまで、記述が多岐にわたっていて詳細。
こうした体験記を今は個人サイトなどで発信してるかたが多いけど、紙の本もいいなあと思いました。




コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)


    最新記事