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読了

2009年10月14日 10:52

最近の読了記録
(32)「デパートへ行こう!」 真保裕一著/講談社


深夜のデパートを舞台に、それぞれワケありな人々が集まって、予期してなかった騒動を起こすという群像劇。
わたしは群像劇が好きなので、こういう"それぞれが主人公"みたいな小説にはあっさり手が伸びてしまう。
『ホワイトアウト』を読んだときは感じなかったけれど、真保さんの文章は心情説明が行きつ戻りつしてちょっとくどいかな。
加治川の待遇はまさしく不幸で、デパートに対する思い入れがあるのもわかる気がする。
真穂がけっこう自分勝手な女かと思えば、十代のコージとユカが、ちゃらんぽらんを気取ってるようでも考えがしっかりしてるのに好感が持てた。
社長の矢野と警備員の半田のやりとりを読みながら、そういえばデパートや百貨店なんて最後に行ったのはいつだろう、と考えてしまった。
閉店後のデパートって、こんなにしっかりとした警備網が敷かれているんだなあ。
むかし、美内すずえさんのマンガにデパートの家具売り場に夜中になるまで潜むっていうシチュエーションがあってわくわくしたんだけど、やっぱりそんなに簡単にできることじゃないのね(笑)。
読後感があたたかくてほっとしました。

(33)「無理」 奥田英朗著/文藝春秋

こちらは、合併でできた地方都市を舞台にした群像劇。
でも笑えないほどドン底見せつけられます。
生活保護とか詐欺セールスとか万引き保安員とか、どの仕事もものすごく荒んだ人間ばかり出てきて、正直、読むのがつらくなって途中でやめたくなりました。
書かれている季節が寒い地方の冬というのも、この絶望感につながってるのかもしれない。
なんでこんなに不幸で(金銭的にも精神的にも)貧しいひとばかりなのか。
ただ、ひとりひとりの背景に光を当てて冷徹に書きつくすという点では上記の『デパート~』よりずっと読みごたえがあったし、救いが見られないままの結末も悲惨すぎるところが『乱反射』よりリアルでした。
そういう部分はタイトルどおり、無理やり物事を押しすすめようとした反動だと思うけど、わたしは同じく奥田さんの著書・『最悪』のほうが感情移入できたぶん読後の満足感が大きかったです。




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