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読了

2008年06月25日 00:00

最近の読了記録
17)「ピロティ」 佐伯一麦著/集英社
マンションの管理人が話しているだけなのに、その集合体が浮かびあがってくるお話。
集合住宅って、その戸数だけいろんなドラマがある気がする。
奇抜な設定の人物とかはいなくて、どこにでもある日常的な話が読みたかったので面白かった。
さらりと読めました。

18)「ツバメ記念日」 重松清著/文藝春秋
春をテーマにした短編集。
春は新生活のはじまりであり、別れの季節でもあるんだなと再確認させられる話が多かったです。
『めぐりびな』は初節句を迎えた女の子への愛情もさることながら、
両家の義母の思いやりもそれぞれ感じられて、やさしいお話でした。
奥さんを気遣う旦那さんもいいひとで、きっとここの家の娘さんも幸せに育ってゆくんだろうなと思わせてくれる。
『ジーコロ』の主人公の気持ちはすこしわかる気がする。
18歳で家をでて新しい環境に飛び込んだころの自分には、目の前に本当にいろんな未来が広がっていたんだなーって、
すこし眩しい気持ちと、今の自分の居場所を見下ろしてわきあがってくる気持ちとがないまぜになっちゃうというか。
……でも、思い立ったら電車や車で当時の町まで行けるのは心底うらやましい。
この本の中では、タイトルにもなってる『ツバメ記念日』がいちばん好きです。
赤ちゃんを抱えて仕事にがんばってるお母さんお父さんは本当にえらいと思う。
仕事も育児も家事も完璧にやらなきゃ気がすまない時って、「~ねば、~れば」の精神的呪縛にかかってるんだろうなぁ。
そういうのって子どもを持っていなくても、主婦業や学業をしていても、陥ってしまう魔の呪縛だと思う。
最後に出てくる老夫婦みたいな、なにかの折にその呪縛をこそっと解いてくれる存在ってありがたい。

19)「僕たちのミシシッピ・リバー」 重松清著/文藝春秋
上記と同じ短編シリーズで、これは夏版。
夏といえばお盆の季節なのか、「死」をテーマにした話が多く、ちょっとどきどきしました。
特に『べっぴんさん』はついこの間同じような経験をしたので。
わたしの場合は祖父でしたが、読んでいて不覚にも泣いてしまった。
子どものころに祖父母のところへ泊まりにいって、やっぱりベビーパウダーをはたいてもらってたってのもあるし。
こういう、身内の死を介してしみじみ実感する目上の人の優しさって、誰かが書き記してくれてると、すごくありがたい。
まだ元気な人たちと、元気でいるうちに、思い出を大切にしあう術を教えてもらえるから。
うちのばあちゃんにも長生きしてもらいたいな。
このシリーズは秋、冬版も刊行するらしいので、続けて読みたいです。

読了

2008年06月18日 00:00

最近の読了記録
15)「いつかパラソルの下で」 森絵都著/角川文庫
うーん。
こういう女の人って巷に多いのかもしれないけど、あんまり好感が持てなかった。
たしかに父親を軸にして起こるまぎれもない「ドラマ」だけど、裏表紙にあったように「心温まる」かどうかはちょっと疑問。
ただ、ときおり文章の間からすごくキラキラした表現がこぼれていて、
それは時にすごく寂しかったり後ろ向きな表現なんだけど、「ああ、こういう気持ちってあるよなあ」
と思ったので、この作者のほかの本も読んでみたくなった。

16)「空白の叫び」(上) 貫井徳郎著/小学館
3人の少年たちが個々に殺人を犯す過程を描いた小説の上巻。
こわいというよりうす気味悪い。
とくに久藤の心情がとびぬけて異常なので気持ち悪いです。
後半から少年鑑別所に舞台が移るけど、そこでの展開もすさまじい。
上巻だけしか見つからずに母から借りた本なので、これから下巻を探しだして(笑)貸してもらう予定。

読了

2008年06月06日 00:00

最近の読了記録

13)「秋の猫」藤堂志津子著/集英社
犬や猫を飼っている主人公が出てくる5つの短編集。
どの話を読んでも、ああこういう人っているよなあと思ったけれど、
変に奇をてらったストーリーではないので、どこか心にストンと落ちる感じ。
2つめの『幸運の犬』は主人公がどこか健気で、離婚することになった夫にとってはすごーく後味悪いラストだろうけど
このくらいの役得は見逃してやれよという、前向きな気持ちにさせられる。
女って強いな。
すごく好きなのは5つめの話、『公園まで』。
好きな人と自分と犬と猫。
世間一般でいう家族とはすこし違う。
でも、絆はまぎれもなく家族のもの。
わたしも翻訳業を目指しているけれど、収入の高低ではなく、こういう生き方をほんとうの「幸せ」って呼ぶんだろうなと思う。
すごく救いのあるラストで、それだけでもこの本を読んでよかったと思った。

14)「愛しの座敷わらし」 荻原浩著/朝日新聞出版
新聞の広告を見て衝動買いした1冊。
感想は、すごくおもしろかった!
地方に左遷させられた父と、姑にも夫にも辟易している母、その娘と息子、
そして認知症のあらわれはじめた姑という高橋一家が、引っ越し先の田舎で体験するなんだか可笑しな現象。
掃除が大変な広い家とか、東京人より東京に詳しい地元の人とか、勝手によその庭にネギを植えちゃう近所のおばあさんとか、
なんつーか、東京と地方都市の差とそれに付随するカルチャーショックがよく描かれていて、笑えました。
家族一人一人の視点が入れ替わりつつストーリーが進むので、それぞれが抱えている事情もわかってダレないし。
ただ、期間限定にする必要はなかったんじゃないかな、と思う。
本当の田舎暮らしは、やっぱり家を買って住んでからのほうがややこしいから。
でも、これ書いてるとき作者もすごく楽しかったんじゃないかなあ、と思えるほど文章が踊ってるけど。
そういう話を読むのは大好きです。


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